Ripy[リピー]|音楽アーティストを楽しむリスナーマガジン

Ripy[リピー]|音楽アーティスト アイドルを楽しむリスナーマガジン

宇多田ヒカルが出産や母の死で変わった?歌詞にも変化が

2016年10月27日

宇多田ヒカル

宇多田ヒカルが活動を再開してからというものの、「やっぱり宇多田ヒカルはスゴイ!」「宇多田ヒカルは天才だ」「宇多田ヒカルがいてよかった」なんて声が世界中から聞こえてくる勢いで宇多田ヒカル人気は浮上している。「人間活動」と題して彼女が身を潜めたのが2011年のこと。あれからかなりの時間が経った。彼女は一切の表立った音楽活動を停止し、一人の女性としての生活を送ることを選んだ。皆が忘れ去ってしまうには十分すぎるほどの時間だ。それくらいの間、彼女は表舞台には出てこなかった。なのにも関わらずだ、今宇多田ヒカルというアーティストはかつてと同じように、むしろ活動休止前以上の人気を見せている。

ニューアルバム「Fantôme」は売上35万枚を突破。各国のiTunesチャートでトップ10入りを果たすなど、宇多田現象はとまらない。宇多田ヒカルという絶対的な存在性を見せつけた瞬間でもある。本当に良いもの、人々が認める芸術性に富んだものは時間がいくら経とうが良いと感じることができる。宇多田ヒカルの音楽作品は100年後だとしても人々の耳に届いているかもしれない。

そんな宇多田ヒカルだが、人間活動を行っている数年の間に過酷な経験をも積んでいたのはご存知の通り。母の死が彼女の作品に大きな影響を及ぼしている。更に自身が母親になったことも作品に表れているのではないか。人間活動前、と人間活動後、の宇多田ヒカルの変化。

日本語の歌詞に変化

アルバム「Fantôme」は約8年ぶりのオリジナルアルバムだ。そんなに時間経ったっけ?と思う人も多いかと思うが、8年という月日は人を変えるには十分すぎるほどの時間だ。宇多田ヒカルも一人の人間、一人の女性なのでそれは同じ。アーティストは生活の変化や環境の変化に敏感だ。それが作品に顕著に表れてしまうアーティストは多い。宇多田ヒカルも楽曲にそれが表れているだろう。まず今回のアルバム「Fantôme」は「日本語」が多いということ。なぜ日本語がこんなにも多いのか?日本という国に対して強い想いが芽生えたのか、日本語という言葉自体への関心が高まったのか。彼女自身の中でどんな変化があったかはわからないが、とにかく日本語への鮮度みたいなものが前作よりも確実にバージョンアップしている。楽曲タイトルにもそれは現れている。

宇多田ヒカル「Fantôme」

01. 道
02. 俺の彼女
03. 花束を君に
04. 二時間だけのバカンス featuring 椎名林檎 
05. 人魚
06. ともだち with 小袋成彬
07. 真夏の通り雨
08. 荒野の狼
09. 忘却 featuring KOHH
10. 人生最高の日
11. 桜流し

すべてが日本語タイトルになっている。

ちなみに前作のアルバム「HEART STATION」

01.Fight The Blues
02.HEART STATION
03.Beautiful World
04.Flavor Of Life (Ballad Version)
05.Stay Gold
06.Kiss & Cry
07.Gentle Beast Interlude
08.Celebrate
09.Prisoner Of Love
10.テイク 5
11.ぼくはくま
12.虹色バス
13.Flavor Of Life

2008年リリースのアルバムだ。こちらのアルバムは英語タイトルが多い。人によっては宇多田ヒカル=英語のイメージもある。しかし今回のアルバム「Fantôme」ではすべてのタイトルが日本語だ。これはかなりの変化と言えるだろう。

そして歌詞にも変化は当然のごとく現れている。思い返せば人間活動中にリリースした「桜流し」という楽曲で、前までの宇多田ヒカルとは違うものを感じたがその頃から日本語詞に対しての変化が表れていたのかもしれない。「桜流し」ではその歌詞から母親のことや子どものこと、時期からして震災のことも関係している。それを見事に表現している宇多田ヒカルが描く詩。文学を愛してやまない彼女だからこそ日本語への言葉選びや表現力も他の歌手とは群を抜いて違う。

朝ドラ「とと姉ちゃん」のテーマソングとしても愛された「花束を君に」でも宇多田ヒカルならではの日本語詞が垣間見れる。この楽曲は恋人にあてた楽曲だとも捉えることができるし、夫婦の楽曲だとも捉えることができる、大切な誰かがいる人にとっては誰にでも響く楽曲だ。宇多田ヒカル自身は母親のことを書いた楽曲だと公言している。

「真夏の通り雨」、この楽曲もすべて日本語詞で描かれている。英語のフレーズひとつすらない。英語を使うことをなぜ止めているのか。人間活動を経て様々な経験をした彼女の日本語に対する挑戦だろうか。英語よりも日本語のほうが幅広い表現力があること、英語と日本語の両刀使いの彼女だからこそ知っていることだろう。一人称ひとつとってみても選ぶ単語が多い日本語だ。英語よりも日本語のほうが歌詞を書く難易度が高いのではないだろうか。30歳を過ぎて結婚、出産、母の死という経験を経た彼女だからこそ日本語で描けるものがあるようだ。

「真夏の通り雨」は若かりし頃の熱くなった恋を思い出して、今も恋い焦がれる瞬間がある少し歳を取った女性像を描いているように見える。女性だからこそ描ける詩であり、宇多田ヒカルだからこそ描ける言葉の表現。

スポンサーリンク

「真夏の通り雨」

夢の途中で目を覚まし
瞼閉じても戻れない
さっきまで鮮明だった世界 もう幻

汗ばんだ私をそっと抱き寄せて
たくさんの初めてを深く刻んだ

揺れる若葉に手を伸ばし
あなたに思い馳せる時
いつになったら悲しくなくなる
教えてほしい

今日私は一人じゃないし
それなりに幸せで
これでいいんだと言い聞かせてるけど

勝てぬ戦に息切らし
あなたに身を焦がした日々
忘れちゃったら私じゃなくなる
教えて 正しいサヨナラの仕方を

誰かに手を伸ばし
あなたに思い馳せる時
今あなたに聞きたいことがいっぱい
溢れて 溢れて

木々が芽吹く 月日巡る
変わらない気持ちを伝えたい
自由になる自由がある
立ち尽くす 見送りびとの影

思い出たちがふいに私を
乱暴に掴んで離さない
愛してます 尚も深く
降り止まぬ 真夏の通り雨

他アーティストとのコラボレーション

アルバム「Fantôme」では歌詞の他にも変化がある。それが他のアーティストとコラボしているということ。一人での楽曲作りを得意とする宇多田ヒカルの新たなる挑戦ではないだろうか。彼女は作詞作曲も当たり前のこと、アレンジ部分もすべて一人でこなせるだけの能力がある。自宅で楽曲制作するのもちょちょいのちょいだ。宇多田ヒカルは天才、そんなことは誰もが知っている。しかしアーティストたるもの、やはり新しい風を自分の中に吹かせないと刺激ある作品はできないだろう。宇多田ヒカルは今回様々なアーティストとコラボしている。他人の歌声を自分の楽曲に取り入れること自体が宇多田ヒカルにとってはかなり珍しい。

誰もが一番注目したのは椎名林檎だろう。椎名林檎と宇多田ヒカルは歳は違えどデビュー期が同じであり、二人ともEMI MUSICに所属していることから、かつてはEMIガールズなんてユニットもひそかに結成していた大の仲良しである。ラジオにてカーペンターズの「I Won't Last a day without You」を二人でカバーしたり、雑誌にて二人のスマホでのメッセージのやり取りを掲載したりしたこともある。そんな二人が公式にて初めて楽曲でコラボレーション。これには両者のファンは興奮したことだろう。

小袋成彬(おぶくろなりあき)という91年生まれの若手シンガーであり、プロデューサーである。楽曲「ともだち」でコラボしている。この曲は宇多田ヒカル曰く「同性愛者の同性愛者ではない友達への恋を歌った曲」だ。

KOHH(コウ)は今注目されている実力派ラッパーである。楽曲「忘却 featuring KOHH」で参加している。パッと見、宇多田ヒカルとは正反対の環境で育ったようにも見える彼だが、お互い惹かれあう何かがあったのだろう。KOHHはこのコラボ前から宇多田ヒカルへの気持ちを自身の楽曲にて表現している。

こうした他人とのコラボレーションが宇多田ヒカルへの新たな楽曲性を生んだ。

歌声が優しくなった

宇多田ヒカルが人間活動の間、どれほど歌っていなかったのかはわからない。以前、鼻歌程度なら歌っていたが本気で歌うことはほとんどなかったと言っていたことがある。だとしたら彼女は本当に凄い。5年もの間、まともに歌わなかった人間が前のように歌えるだろうか?彼女の歌声は人間活動以前と変わらぬような歌声を聴かせてくれている。

しかしやっぱり声帯や歌声が変わるのは歌手であっても人間なら当然で、宇多田ヒカルの歌声も少し変わったように聴こえる。しかしそれはより良い方向に変わっているのではないだろうか。「花束を君に」でもわかるように、前よりも歌声が優しくなって少し深みが増したように聴こえてくる。日本語の歌い方が前よりも丁寧になったようにも聴こえてくる。「歌う」ということをほとんどしない期間を設けた歌手は、こういった変化をするのはとても珍しいのではないだろうか。大抵は昔よりも声がでなくなった、昔の歌声のほうが良かった、まったく声が出ていない。なんて言われるのがオチだ。しかし宇多田ヒカルのそれは全くそんなことを感じさせない。むしろ前よりも万人に聴かせる歌声に進化しているようにも見える。それはまるで母親の子守歌のようにも聴こえてくる。

宇多田ヒカルの影響力

5年もの間活動してなかった歌手が、これほどまでに未だに影響力を持っていることがありえない。宇多田ヒカルという存在がどれだけ特別なものかわかったような気がする一連の出来事だ。ツイッターの発言ひとつにしても、テレビ番組に出るだけでニュースになったり、アルバムの売り上げであったり、そういった「特別感」がデビュー時からあるのが宇多田ヒカルだ。一人の女性歌手がここまでの影響力をもっているのは歌手多しといえど女性歌手では、そして日本では彼女一人だけだろう。さ更にここまで素晴らしい音楽作品を提示してくれる。音楽だけじゃなく、考え方や活動スタイルなどもファンを魅了している。宇多田ヒカルという人にはいつも脱帽であり、その才能に毎回驚くしかない。この先も自分だけのペースで歌を歌い続けて、彼女だけにしか作れない音楽を届けていってほしい。

アルバム「Fantôme」で宇多田ヒカルを好きになったという新しいファンも沢山いることだろう。「花束を君に」で宇多田ヒカルのことを好きになったという世代も沢山いることだろう。そして以前から宇多田ヒカルのことを好きだった人たち、みんな彼女の活動再開を心のどこかで本当に待っていた。彼女が人間活動をしていた月日の中で聴いていた人たちの環境も大きく変わっただろう。でも心の片隅には宇多田ヒカルという存在はいつもいた。そしてまた歌ってくれた彼女に感謝したい。これからもっともっとその歌声を響かせていってほしい。

Fantôme / 宇多田ヒカル


関連記事
「花束を君に」の歌詞から見る宇多田ヒカルの天才っぷり
なぜ椎名林檎が東京五輪に?Perfume 中田ヤスタカ MIKIKO 真鍋大度も?

 

人気の記事

今週のMステを先取り

今回の出演者

AKB48
亀と山P
コブクロ
私立恵比寿中学
Dragon Ash

もっと見る

前回の出演者

ウルフルズ
Aimer
亀と山P
LiSA
WANIMA
Flower

もっと見る

こんな記事もあるよ